エンドロール
人生にはストーリーが必要だ。
ストーリーが無い人生は退屈だ。
だから人はストーリーを求め、そしてストーリーの無い人生を嫌悪する。
私も右に同じ。
だけどストーリーなんてそんなにありふれているものじゃない。
あるとしても駅前数ブロックでアルコールと共に摂取し、それとともに消えて行く希薄でありきたりなストーリーばかり。
そんなストーリーは肝臓がブレイクするまで摂取し飽きた。
だから私はストーリーを摂取する。
小説とかドラマとか映画とか。
自らストーリーを創造できない私は誰かの考えた汎用のストーリーを摂取する。
何事もそうなように過剰摂取は依存を生み、依存は更なる過剰摂取を生む。
そんなバスケットボールダイアリー的螺旋に陥った私は毎日歓楽街の隅にあるこの安カフェで出勤前キャバ嬢の香水の匂いにまみれながらカフェインとニコチンとストーリーを摂取している。
ブレンド、ヴァージニア、文庫本。
もう何日そんな日を繰り返しただろう?
うんざりするくらいそんな日々をすごした。
もう摂取することすら面倒だ。
だけど体と心は求め続ける。
カフェインとニコチンとストーリーを。
いっそのことそれら全てを注射器に詰めて動脈にダイレクトにぶちこめたらどんなに楽だろうと思う。
そんな新種のカクテルについて夢想しているうちに窓の外の空はグロテスクな赤紫からコバルトブルーに変わっている。
もう夜だ。
今日が終わる。
夜空にはエンドロールが流れている。
キャストもスタッフも誰の名前も記されていない空っぽで透明なエンドロール。
そこには誰もいない。
私もいない。